妊娠の仕組みを知り正しい避妊法を知ろう【今さら聞けない避妊の基本のキ】#性のギモン

学校の性教育では避妊の方法を教えてくれるケースは多くなく、正しい避妊法を知らないまま性交渉をスタートしてしまっている女性がとても多いと感じています。そこでこの連載では避妊の基本的なことから順序だててお話できればと思います。第一回は妊娠の仕組みを知り、正しい避妊法を知る。そして避妊に失敗してしまった時のリスクについてお話します。

目次

避妊とは妊娠の過程を遮断する手段

避妊のお話をする前に、まずは妊娠の仕組みについてお話したいと思います。正しい妊娠の知識をつけることで、正しい避妊の方法も知ることができます。

妊娠とは男女が性交を行い精液が膣内に射精された結果、たくさんの精子が卵管を通り最終的に一つの精子が卵子と出会い受精卵となり卵管から子宮に移動して子宮の内膜に着床することで成立します。

避妊とはこの妊娠の過程を遮断する手段を言います。避妊の方法はコンドームや経口避妊薬(ピル)、子宮内避妊具(ミレーナ)等、さまざまありますが、望まない妊娠を避けるために正しい避妊を行うことが大切です。

コンドームと経口避妊薬(ピル)で確実な避妊を

確実な避妊をするのであれば、コンドームと経口避妊薬を併用することをおススメします。日本では避妊法としてコンドームを選択する方が多いですが、コンドームの避妊率は85%!7回に1回はコンドームを使用しているのに妊娠してしまう確率なのです。

そのため、コンドームは避妊法としては効果が低いと言わざるを得ません。それに引き換え経口避妊薬の避妊率は99.7%と高く、確実に避妊を行うことができます。

「なら経口避妊薬だけでいいのでは?」

そう思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、HIVやクラミジア等の性感染症(性病)の予防のためにコンドームを併用することでdual protection(二重予防)になるので、コンドームと経口避妊薬を併用することをおススメします。

正しい避妊をしなかった場合、高いリスクを伴う

正しい避妊をせずに精子が膣内で射精されてしまった場合、女性は次の生理が来るまで「妊娠していたらどうしよう…」と不安な日々を過ごすことになるでしょう。

そんな時に女性の味方になってくれるのが ”アフターピル(緊急避妊薬)”です。

文字通り性交後に妊娠を防いでくれる薬です。アフターピルは性交後にできるだけ早く内服することで避妊効果が高くなります。ですが100%の避妊効果はありません。そして処方される施設によりますが1回1万円前後と安い価格ではありません。

正しい避妊をしなかった結果、望まない妊娠をしてしまった場合に人工妊娠中絶を選択する方も多いでしょう。現在の日本では妊娠初期の人工妊娠中絶は”手術”または”内服薬”の2つの方法があります。

手術の場合は子宮内容除去術として子宮内容物を除去します。その際に子宮穿孔(穴を開けてしまう)や子宮内を傷つけるリスクが発生します。手術をしたこと自体はその後の妊娠には影響しませんが、妊娠後に癒着胎盤になるケースがあり注意が必要です。

内服薬を用いた中絶は最近日本で認可された中絶方法です。手術することがないので、一般的には体に負担が少ないと言えますが、大量に出血するリスクがあるため中絶目的の入院が必要であったりと時間的拘束があります。また完全に子宮内容物が排出されず結果的に手術が必要になることもあります。

“大切な自分の身体を守れるのは自分だけ”

男女ともにセックスによるコミュニケーションはとっても大切なことだと思います。しかしその結果、望まない妊娠をしてしまったら中絶するにしても産んで育てるにしても女性には大きな負担が生じます。

子どもを産んで育てるのには責任が伴います。自分自身の仕事のことや育てる環境、経済面等、考えることが山のようにあります。

自分が本当に子どもを望んだ時に妊娠という選択ができるように、そして大切な自分の身体を守るためにも、正しい避妊の知識をもって正しい避妊をしていただきたいと思います。

産婦人科医として、一人の女性として、この連載で正しい避妊の知識を得て大切なご自身の身体を守る術を身に付けていただければ嬉しく思います。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日本大学医学部を卒業。2年間の研修医終了後は、日本赤十字社医療センターへ入職。当時東京一の分娩数を誇る病院であり、妊娠・分娩を中心に経験をつみ国立国際医療センター病院へ転職。腹腔鏡手術や婦人科がん手術等幅広いスキルを身につけたのち、不妊治療を専門とするリプロダクションクリニック東京へ。少子化を背景に、キャリアを持って働く女性が不妊に悩んでいる現状を目の当たりにする。働く女性が将来妊娠に対する不安や婦人科疾患に対して知るきっかけや相談できる拠点となれたらという思いから開業に至る。

目次