4度の離婚経験を持つ円満離婚弁護士、原口未緒先生に夫婦問題に悩む皆さんの相談に答えていただきます。弁護士としてだけでなくカウンセラーとしても活躍する未緒先生だからこその視点で相談者さんへ寄り添います。第一回は浮気がバレて離婚だと言われた妻からの相談です。
相談:私の浮気がバレて夫から離婚だと言われました。離婚はしたくありません。どうしたらいいでしょうか?
結婚して10年目、10歳の娘、7歳の息子、そして4歳の娘がいます。
私の浮気がバレて、夫に「離婚だ!」と言われました。夫は私への仕返しとして自分も浮気をしています。私は、子どもたちがまだ小さいので離婚したくないと伝えましたが、夫からは「それはおまえが浮気相手と別れたから、離婚したくないだけだろう」と言われました。
正直、モラハラ気味の夫から日々さまざまな文句を言われ、ストレスを感じていました。
その結果、パート先の優しい同僚と浮気をしてしまったのです。私が悪かったと反省していますが、すでに別れましたし、夫も浮気をしているので、今はお互い様だと思っています。夫は性欲が強く、ほぼ毎日求められ、その相手をするのにうんざりしています。少しでも気に入らないことがあると、いつも「お前はダメな奴だ」「最低の母親だ」「自分のことしか考えていない」などと否定されます。
いい加減、もう離婚したほうが良いのではないかと思っています。
しかし、夫の浮気の証拠をしっかりとつかめていないので、それを確認しないといけないと考えています。
浮気の証拠がなければ、慰謝料はもらえないのでしょうか?私の浮気の証拠は夫が持っています。その場合、子どもの親権も取られてしまうのでしょうか?パート勤務で収入が少ないため、それも心配です。夫の浮気の証拠をつかんで、お金が貯まるまで我慢しなければならないでしょうか。私が幸せになれるためのアドバイスをいただければと思います。
未緒弁護士の回答:相談者さんに嫉妬してヤキモチを焼いているのでは?
相談者さん、こんにちは。夫のモラハラがストレスで浮気をしてしまったのですね。
ご主人様は「浮気相手と別れたから自分と離婚したくないんだろう」とおっしゃっているそうですが、これはきっと相談者さんに嫉妬していて、ヤキモチを焼いているのではないかと思います(笑)。
ご主人様は、愛情表現がとても不器用でいらっしゃるのではないでしょうか?私から見ると、ご主人様は奥様のことが大好きで、でもその愛情表現の方法がよくわからなくて、モラハラになってしまったり、文句を言ってしまったり、奥様に悪態をついてしまったりしているのではないかと思います。それがご主人のひねくれた愛情表現になってしまっているのですね。
それに対して奥様は当然、嫌な顔をされると思うのですが、それがますますモラハラ行為を助長してしまうのではないかな?と思います。
というのも、男性は一般的に女性を喜ばせたいと思っていて、女性が喜んでくれるだけで純粋に嬉しいと思う生き物だと言われています。相談者さんからしたら信じられないかもしれませんし、むしろ逆効果なことをしていると思われるかもしれません。
ですが、ちょっと思い出してみてください。子どもの頃、男の子が好きな女の子のスカートめくりをしたり、ちょっかいを出したりしているのを目撃したり、実際に体験したりしませんでしたか?成長せずに大人になっても同じようなことをしてしまう男性が残念ながら一定数いるのだと思います。
“男は永遠の5歳児”なんてことも言われます。
未緒弁護士の回答:本当に離婚したい男性は、ある日突然出て行ってそのまま帰らない
相談者さんが幸せになりたいのであれば、まずは相談者さんご自身が主体的になることが必要です。
つまり、相談者さんご自身が「離婚するのかどうか」「離婚したら幸せなのか」「離婚しないでご主人様との関係を好転させた方が幸せなのか」といったことを突き詰めて考えてみてください。
ご主人は口では「離婚だ!」とか「親権は自分にある!」とか言っているのかもしれません。ですが、私がこれまで多くの離婚問題を抱えるご夫婦を見てきた経験から申し上げますと、本当に離婚したい男性は何も言わずにある日突然、家を出て行ってそのまま帰らなくなるものです。こんなに何度も「離婚だ!」とは言わないものなのです。ですので、ご主人様は離婚するつもりは全くないのだと思います。
まずは、ご主人様の言葉に振り回されることをいったん止めて、ご自身の気持ちをじっくりと見つめ直してみてください。そして、気持ちを冷静によく見つめ直した上で、「本当は離婚したくない、もし可能なら夫が優しく良い夫になってくれれば良い」と思うのであれば、それも可能だと思います。ご主人様に幸せにしてもらおうと思う気持ちを捨てて、ご主人様が変わるのを待つのではなく、能動的かつ主体的に、ご自身から“変わる”“変える”努力をしていただきたいと思います。
未緒弁護士の回答:男女の違いや性質の違いを知ることが大切
そのために、まずは男女の違いや性質の違いを学ぶと良いかと思います。男性と女性は、勘違いやすれ違いをしていることが多くあります。男女の違いを認識した上で、コミュニケーションの仕方を少しずつ変えてみてください。
ご主人様は、相談者さんが何をしたら喜ぶのか、どうしたら喜ばせることができるのかが分からないため、トンチンカンなスカートめくり行為を続けてしまっています。
相談者さん自身が冷静になって、自分が求めていること、してほしいこと、喜ぶことを認識し、ご主人様に示していく必要があると思います。
例えば、お皿洗いをしてくれたとしたら、その行為自体を喜び、褒めて労わってあげてください。そうすることでご主人様は、「こういうことをしたら喜んでくれるのだ」と学んでいきます。
未緒弁護士の回答:離婚を決意したとしても慰謝料は多くは取れません
もし本当に離婚を決意されたとしても、慰謝料はそれほど多額には取れません。
裁判所で認められる金額は、多くても200万円程度です。
さらに、相談者さんの浮気が旦那様よりも先であるため、もしかしたら慰謝料が認められない可能性もあります。
それに、そもそも、裁判まで進むケースは稀です。離婚は、「協議離婚」→「調停離婚」→「離婚訴訟」という経過を辿ります。協議や調停の段階では、ご主人様が自ら慰謝料を支払うことを認めることは少ないでしょう。
そして、裁判までに進む間は両者が納得し、合意しなければ離婚は成立しません。ご主人様が自ら慰謝料を支払うことを認めない限り、支払われることはないのです。そのため、調停で慰謝料が支払われることは滅多にありません。その代わりに「解決金」と呼ばれるものがあり、これは調停を終わらせるために、解決するために、どちらかが悪いということではなく、支払うことで両者が納得し、調停を終わらせるケースが多数派です。
旦那様の浮気の証拠がないことも、裁判まですることを考えないのであれば、それほど重要ではありません。また、親権と浮気は全く別の問題です。
親権は、お子さんの視点から見て、お子さんにとってどちらを権利者とすることが適切かという基準で判断されます。
ご主人は離婚したくないがゆえに、相談者さんに対して「浮気の証拠があるから、お前は親権を取れない」とおっしゃっているのではないでしょうか。それだけ、相談者さんが自分から離れてしまうことを恐れているのではないかと思います。
未緒弁護士の回答:自分で自分を幸せにすると決意することが大切
“幸せになれるのかどうか”は、自分自身にかかっています。
逆に言えば、自分次第で幸せにも不幸せにもなれるのです。相談者さんが「離婚をする」と決めたのなら、離婚へと話が進むでしょうし、「離婚しない」と決めたのなら、そちらに話が進むと思います。
とにかく、「幸せになる」「自分で自分を幸せにする!」と決意することです。ご主人様が幸せにしてくれるのを待っていてはダメです。ご主人は、どうしたら相談者さんを幸せにできるのか、喜んでくれるのかが分かっていないのですから。
相談者さんがしっかりと自分の気持ちを見つめて、覚悟を決められることを応援しています。