性教育には世界基準がある【助産師やまがたてるえの大人の性教育】

助産師であり心理カウンセラーとしても活動しながら保護者にむけて多くの性教育講座も開催する、やまがたてるえさん。トキメキでは大人だからこそ知って欲しい、さまざまな性にまつわる事柄について教えていただきます。第一回は世界基準の性教育とは?です。

2009年にUNESCOを中心に策定されたガイドライン

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(International Technical Guidance on Sexuality Education, ITGSE)は、世界保健機関(WHO)と国連教育科学文化機関(UNESCO)が主導して策定した、包括的な性教育のためのガイドラインです。

初版は2009年に発表され、その後、2018年に改訂版が発表されました。

国連機関であるUNESCOを中心に、WHOやUNFPA(国連人口基金)、UNAIDS(国連エイズ合同計画)、ユニセフ(国連児童基金)、UN Women(国連女性機関)などの協力を得て作成されています。

これらのガイドラインは、子どもや若者が健全な性に関する知識を学び、健康で尊重ある関係を築けるよう支援することを目的としています。
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000260770

本来の性教育は「人権」と「科学」がベースの【包括的性教育】

素晴らしいガイドラインがあるにもかかわらず、日本は残念ながら2024年現在、ガイダンスに基づいた性教育を国としては行っていません。そこには長年の性教育バッシングなどの背景も考えられます。ジェンダーギャップ指数などを含める社会的な背景からもわかるように、日本は性教育についてはまだまだ遅れている国と考えてもいいのかもしれません。

また、性教育が「性」「生殖」に限定されるような教育だと思われている部分もまだまだあるかもしれません。本来のガイダンスを基にした包括的性教育は「人権」「科学」を基にしたものであることが、広く理解されれば良いといつも思っています。

2020年ごろから内閣府は性犯罪・性暴力対策の強化の方針を立て、少しずつではありますが新しい性教育が広まりつつあります。性教育関連書籍も多数発売されていて、皆様も目にしたり、手に取ったり、購入した方も増えていると思います。そして現在は包括的性を教育実践する人たちが増えてきています。これからもっと理解が進み、日本も国として、このガイダンスに基づいた教育が広がると良いなと切に願っています。

8つのキーコンセプト

ガイダンスには以下8つのキーコンセプトというものがあります。

  • 人間関係
  • 価値観、人権、文化、セクシュアリティ 
  • ジェンダーの理解
  • 暴力と安全確保
  • 健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
  • 人間のからだと発達
  • セクシュアリティと性的行動
  • 性と生殖に関する健康

これらのキーコンセプトすべてが、相互しあっていて、共に学びあえるようになっています。個人的には1の「人間関係」が特に大切だと思います。

「人生の悩みの9割は人間関係」なんて言葉もありますが、人生において一番大切なことだと思っています。ただ、その人間関係のためにも2の「価値観、人権、文化セクシャリティ」や、3の「ジェンダーの理解」、4の「暴力と安全確保」や、ウェルビーイングについての理解も必須な事項になると思います。

自分の人生を自分で決める力を得るための教育

包括的性教育は人権と科学をもとにした「人が幸せに生きていくための教育」だと思います。

そもそも私は教育のすべてが、幸せな人生を送るために存在していると思っています。人は幸せになるために生まれてきたはずです。学ぶことで自分の人生を選択できる「自己決定」の力を得られると思います。

様々な人が多様な背景の中で生活していますが、どんな人も「自分の人生」を「自分で決めて生きること」が幸せの鍵になるのではないでしょうか。

「誰かの人生」「誰かのいいなりになる」「誰かにコントロールされる」ことではなく、自分を主人公として生きるために必要な知識として、改めて大人の皆さんに包括的性教育について届けられたらと思っています。


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この記事を書いた人

助産師/保育士/心理カウンセラー/著者

臨床経験5年。自分の子育てを通して、孤独な子育てや葛藤の多い経験をしました。親子が「育ち合う」この時に暮らしを心地よく過ごし、子どもを信じて見守る気持ちを育てるサポートができればと日々活動を続けています。Well-beingを軸に子育て支援を続け、2024年現在子育て相談17年目を迎えます。個別相談、カウンセリングも多数経験しております。子育てや性教育講座など、ニーズに合わせた講座開催や、講義のアドバイザリー、起業女性へのアドバイスなど多方面で声をかけていただいております。小さなころから、文章を書くことが楽しく、そのご縁から2010年に1冊目の本「13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと」を出版、以後計8冊の本を出版しています。
好きなこと:読書、コーヒーを淹れること、ランニング、英語学習