元なでしこリーグ女性サッカー選手の3人がジェンダリストして活動するユニット“ミュータントウェーブ”。トキメキではミュータントウェーブが日々、何を想い、感じ、行動しているのかを、それぞれの視点でコラムとして発信します。第二回は、ミュータントウェーブのリーダーおおちゃんに、ご自身の今までのコトについてお話いただきました。
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まるで動物園のように個性豊かでお互いを認め合う女子サッカー文化
幼稚園の年長さんのときに兄がやっていたサッカーについて行ったのがきっかけでサッカーを始めて27歳まで女子サッカー文化の中で生きてきました。
女性がやる球技のスポーツはバスケットボールとかバレーボールとか、いろいろあると思うのですが女子サッカーって、ちょっと特殊で(笑)。
コンタクトスポーツを選ぶ女性ってところで、そもそも勝気というか、割と気合が入ってたりするんですよね。ファッションも髪型もみんな自由でそれぞれが本当にいろんな価値観とスタイルを持っています。そしてお互いがお互いの存在を認め合っていて排除するようなことが一切ない。
動物園の様に毎日ワーキャー言いながらも仲良く一緒に共存しているイメージです!
そんな環境だったので小さい頃から自分の体に違和感を覚えてはいましたが27歳で、なでしこを卒業するまで、いわゆる“生きづらさ”のようなことを感じたことはありませんでした。
就職活動で初めて体感したハードル
就職活動を始めた時に生まれて初めて私のトランスジェンダーという要素がハードルになりました。
当時まだまだLGBTQという概念は浸透しておらず企業は知らないからゆえに非常に敏感になっているように感じました。「面接でそんな質問する?」っていう失礼なことを言われたりもしました。
しかし頑張って活動して、ある企業から内定をいただくことができました。
ところが直後に内定を取り消されたのです。理由は「クライアントから、当事者を採用している自社に対して信用を落としてしまう可能性があるから」というものでした。
到底納得いきませんから抗議しました。そうしたらなぜか「もう一度、会社見学をしてください」と言われ、行った結果、再び内定がでた。この理不尽さにポジティブモンスターの私もさすがに落ち込みました。
それが29歳の時だったのですが30歳を迎えるにあたり、一度リセットして自分の人生をしっかりと見つめなおし自分はどう生きていきたいのか考えたいと思い、オーストラリアにワーキングホリデーで5か月ほど滞在することにしました。
みんながハッピー!笑顔あふれる国オーストラリア
海が大好きなので海に近い場所に滞在することにしました。オーストラリアは多民族国家で本当にいろいろな人種がいますが山側と海側で特徴がぜんぜん違います。私が住んでいたエリアでは、みんなビーサンに海パンタンクトップで、スーパーに行くのでも水着は当たり前。
レジ打ちしながらめっちゃフランクに話しかけてくる店員に日本の「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」というマニュアル接客とは全く違う人間味あふれるコミュニケーションを感じ「これが本物のプロフェッショナルな接客だ!」と感動しました。
ある日はバスで一人のおっちゃんが歌いだしたと思ったら乗客全員で大合唱(笑)。
仕事の面接に行くと名前と何ができるかしか聞かれない。「何のために、いつオーストラリアに来たのか」と「私という人間がどういう人なのか」ということをまず知ろうとしてくれる。オーストラリアのあらゆることに衝撃を受けて自分の中の固定概念がひっくり返りました。人と本当に繋がるということ、人を認めるということ、人とコミュニケーションするということはこういうことなのだと身に染みて感じました。
そしてオーストラリアの人は本当にハッピー!仕事も生きるために嫌々やっているのではなくて楽しんでやっている。全然せかせかピリピリしていない。とにかくワクワクしていて笑顔にあふれている。
そんな場所で生活しながら「自分は何者なのだろう?日本に帰って何がしたいのだろう?」と考え抜きました。
そして湧いてきた想いが「日本にもっとハッピーを増やしたい!笑顔の人を増やしたい!」というものでした。私自身が就職活動で大変な思いをしました。そんな思いをする人を一人でもなくしたい。女性の体をもった男性として女性の世界の中で生きてきた自分だから伝えられること、できることがあるだろうと思ったのです。
愛をもってたくさんのことを伝えていきたい
帰国後、LGBTQの就職支援などのサポートをする会社に就職しました。その中で多くの企業の方たちと関わり、まだまだ伝えなければいけないことがたくさんあると感じました。そしてその使命を胸に会社を辞め、元なでしこでトランジェンダーという同じ経歴を持つ、あさひとまさとミュータントウェーブを結成しました。
ミュータントウェーブは“愛に触れて、溢れて。”という言葉を掲げています。
私には愛をもって伝えていきたいことがたくさんあります。
それを少しずつ連載でもお伝えしていければと思っています。たくさんの愛に触れて、愛が溢れる世の中になりますように。