決して安くない弁護士費用を支払ってまで離婚したいと弁護士事務所を訪れる皆様の想いは切実です。なかには「これを知っておけばもっと有利に離婚を進められたのに」と感じることも多々あります。 私の事務所を訪れる男女比率は5:5。今回の連載では女性の皆様が離婚を考え始めた時に知っておいてほしい知識をお伝えしたいと思っています。第二回は“妻だけ」EDは離婚理由として認められるか”です。
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”妻だけED”とは「妻にだけ正常な勃起現象が起こらないこと」
「”妻だけED”が理由で離婚することはできるのか?」という相談を受けました。
妻だけEDの定義は「妻にだけ正常な勃起現象が起きない」という状況です。
過去の判例で妻だけに夫が勃起不全になることが原因で離婚に至ったというケースは見当たりません。しかしながら過去に次のような判例はありました。
結婚後、約5か月で完全なセックスレス
平成5年3月18日に判決が下りた裁判事項として、「妻との性交渉を拒否しポルノビデオを見ながら自慰行為に耽るなどの夫の行為が婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとされた事例」があります。
この夫婦は結婚後、約5か月の間に2~3回のセックスしかなく、それ以降はまったく性交渉がない状態でした。
にもかかわらず夫は自慰行為に耽り、これが原因で妻は夫への愛情を失い夫婦関係は破綻していると判断されました。
さらに夫は性生活の改善を約束しながらそれを履行していないことも問題とされ、裁判官は夫の行動に異常性を認め離婚の判決となりました。 しかしながらこの夫が妻だけEDだったかどうかは不明です。
離婚に至る道のりは夫婦の数だけある
セックスレスが夫による性交渉拒否によるものであれば夫の落ち度を追求しやすいのですが、原因がEDということになると夫が妻以外と不貞行為をしていないのであれば、どこまで夫の落ち度を追求できるかという問題があり、これだけで離婚を成立させるのは難しい側面があります。
だからこそ弁護士は離婚を希望するに至るまでの状況や夫の性格、夫婦の日々の生活の様子など様々な事情をお伺いし、どうすれば離婚に応じてもらいやすくなるかを考え、それぞれのケースに応じたアドバイスをし、離婚の進め方を一緒に考えます。
例えば、経済的な部分で譲歩をすれば離婚に応じてくれるケース等は離婚後のお子さんとの関係をしっかり維持していくことを相手に保証すれば離婚に応じてくれる場合があります。
また、離婚の意思が揺るがないということをしっかりと伝え続けることで離婚に応じてくれるケースもあります。
離婚に至る道のりは夫婦の数だけあります。
一人で悩まずに弁護士など、その道のプロに相談してご自身の未来を切り拓いていただきたいと思います。