セックスレスは離婚理由として認められるか?慰謝料はもらえる?【弁護士が教える離婚アレコレ】#性のギモン

この記事を書いた人

弁護士 吉成安友

決して安くない弁護士費用を支払ってまで離婚したいと弁護士事務所を訪れる皆様の想いは切実です。なかには「これを知っておけばもっと有利に離婚を進められたのに」と感じることも多々あります。

私の事務所を訪れる男女比率は5:5。今回の連載では女性の皆様が離婚を考え始めた時に知っておいてほしい知識をお伝えしたいと思っています。第一回は“セックスレスは離婚理由として認められるか”です。

目次

セックスレスは離婚理由として認められるのか?慰謝料は発生するのか?

セックスレスは離婚理由として認められるのかについてですが、最高裁判所が昭和37年の判決で「夫婦の性生活は婚姻の基本となるべき重要事項である」との判断を示して、離婚を認めています。

このケースでは結婚前に睾丸を摘出した男性が女性にその事実を伝えながらも性交渉において問題はないと言っていたのにも関わらず、実際は結婚当初から別居までの一年半性交渉がありませんでした。

このケースで、最高裁は、離婚を認めただけでなく、慰謝料の発生も認めました

どのような場合にセックスレスで離婚ができるのか?

セックスレスといっても、例えば結婚生活を続けていく中で、自然に性交渉がなくなり、お互いにそれをよしとしている場合には離婚理由になりません。

それゆえ、円満な夫婦関係の維持のために性交渉を望んでいるのだけれど、相手がそれに応じないという状況にあることを主張したり、証明したりしていく必要があります。

もちろん短期的なセックスレスでは、改善の可能性があると判断される可能性があります。

離婚原因といえるようなセックスレスの目安は一年から一年半くらいになるのではないかと思われます。

もっとも、これは、ただ単に期間だけの問題ではなく、そこに改善のための努力があったかどうか、どういう形で拒否しているか、という部分も大きく関係してきます。

例えば「そんなにセックスしたいなんてお前は淫乱か」などと妻を侮辱するような言葉の暴力がある場合はより夫婦関係の破綻が認められやすくなるかと思います。このような言動は、セックスレスとは別に、モラハラと評価される可能性もあります。

また、夫婦の年代や婚姻期間もセックスレスで離婚が認められるかに大きく影響する要素だと思います。昭和時代の判例には、「夫婦は生殖を目的とする結合であるから、夫婦間の性交渉は極めて重要な意味を持つ」としたものもありました。

さすがに、最近はそのような表現は見かけませんが、現在でも日本の裁判所にはまだ中高年になると性欲が減退するとのバイアスがあったり、結婚期間が長期に渡る夫婦ではセックスレスになるのも致し方ないという風潮があるように思われます。

他方で、若い世代の方が、性交渉がないことが酷だという捉え方がされるように感じます。

実際、前述の最高裁の判例でもセックスレスについて「若い女性である被上告人としては忍びえない」ということで“若い”ことが耐えがたい理由とされています。

そうした意味では、現実的には中高年よりも若い世代の方がセックスレスを理由とする離婚が認められやすいと思います。

もちろん、最高裁が「夫婦の性生活は婚姻の基本となるべき重要事項である」と認めているのですから婚姻期間が長かったり中高年であったりしても、セックスレスが離婚原因にならないということではありません。

ただ中高年などの場合はセックスレスだけではなくモラハラ行為等の他の原因と複合して夫婦関係の破綻が認められるかどうかが判断される場合が多そうです。

セックスレス離婚を有利に進めるために

裁判では、こちらがセックスレスを主張しても夫が全てを否定してくることも大いにありえますので、証拠を残しておくことはとても大切です。

日記等で記録を残しておくことも一つの手段ですが、裁判を有利に進めるためだけにつくったものと捉えられると、効果がないか、場合によっては逆効果になってしまう可能性もあります。

そうならないためには、普段から生活全般の日記を綴っていて、セックスを求めた時にこんな態度を取られた、言われた、といった形で記録を残すことが有効だと思います。しかし、あくまでこちらが作成しているものなので、相手が全否定し嘘をつくことで裁判を乗り切られてしまう可能性もあります。

またセックスレスが原因で心療内科に通っているような場合には、その診断書を提出するということも考えられます。ただし裁判では心療内科の診断書が離婚するために利用されがちということもあって、どこまで証拠として通用するかは難しいところです。長期間通っている場合であれば、カルテ等も含めて証拠となる可能性は上がりそうですが、カルテ等の記載もこちらの話に基づいて記載されるものなので、限界がありそうです。

そこでおススメしたいのは、相手が警戒していない時に会話を録音する、またはLINEでのやり取りで証拠を残すということです。日常のLINEで何気なくセックスに関しての会話を織り交ぜる。「もう〇か月してないよね」「○年セックスしてないけど、このままレスだと悲しい」などのLINEをして相手の反応を待ち、それを証拠として保管しておく。

最近の裁判では、セックスレスに限らず、LINEが証拠として提出されることが非常に多くなっています

最後に・・・婚姻費用について

最後に…調停や裁判をしている夫婦は別居である状況が多いですが、その際は婚姻費用の請求を必ずすることを忘れないようにしてください。しっかり戦っていくためには経済的な基盤を整えることが大事です。別居をしても婚姻関係にある限り、収入が多い方が少ない方に婚姻費用を支払う義務があります。夫の年収によって支払われる金額は変わりますが、しっかりともらえるものは請求しましょう。婚姻費用は、請求しないでいると原則として過去に遡って請求することができないので注意が必要です。

今回は“セックスレスが離婚理由として認められるのか”をテーマにお届けしました。離婚にお悩みの皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

2007年9月に弁護士登録をした東京弁護士会に所属する弁護士。2010年1月より、荒川区西日暮里にMYパートナーズ法律事務所を開設。 取り扱い案件は、離婚を始め、相続、交通事故、医療過誤、知財紛争、企業間紛争、刑事弁護、消費者問題、労働問題まで多岐にわたる。また、多数の企業の顧問も務める。 全ての案件に全力投球。難しい案件ほど燃えて、臨機応変に解決。 実家は大分県豊後高田市の若宮八幡神社の宮司を900年以上務めており、神職資格(権正階)を有する二刀流。 仕事好き、酒好き、ロック好き。

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